大型書店でであった、ふたりの出版社のセールス。果たして勝ったのは。

シェアする

(おいおいおいおい、あかん、あかんて)

地元にある大型書店のビジネス書新刊コーナーで物色中の私は、頭のなかで必死でそのことばを繰り返した。

(今はあかん、引くんや。いったん引け)

執拗な攻撃を繰り返す営業マンに、さあ届けと言わんばかりの思いを込めて念じたが、残念ながら、その声は届くことがなかった。

あたらしい事業を立ち上げた。その事業の初期の軌道はなかなかよい感じだ。ここで一気に加速すべく、情報を得るために、近所にある大型書店にでかけた。ビジネス書コーナーに、マーケティングの新著はないかと探していると、出版社の営業マンが、書店店員のビジネス書コーナー担当の女性に、商談をかけていた。
70ce4e20f1f090d38b05804ad5194159_s
おいおい、これはこれは。なんというラッキーだ。営業マンを支援する事業を生業にしている私にとって、千載一遇のチャンスだ。営業マンが営業をかけている現場に出くわすことは、滅多にない。ネタを集めに、本屋に出向いたのだが、違う意味での、もっと新鮮で貴重なネタが手に入れられそうだ。これは、貼り付いて、ひとことも漏らさず、チェックしないとと、棚の本を手にとりながら、彼らの話に聞き耳を立てていた。

出版社の営業マンが、棚に置かれている、自社の商品の在庫をチェック表とともにチェックし終えたあと、スタッフさんを捕まえて、声をかけて、話し始めた。

「今、お時間よろしいでしょうか」

営業マンは、相手の様子を伺いながら声をかけた

「は、はい、なんでしょう」

とスタッフは答えた。それを聞いた私が、頭のなかで繰り返したのが、冒頭にも書いた

(おいおいおいおい、あかん、あかんて)

なのだ。その声のトーンから、スタッフは忙しそうで、明らかに急いでいる。届いた商品を、時間内に棚に入れないといけないようなおももちで、足早に棚と商品搬入のラックとを行ききしている。あきらかに、今はだめだという返事だ。彼にはそれがみえていない。

もし、仮に私が彼の上司なら、まず、その様子をみたときに声をかけないし、もし、声をかけた瞬間に、その返事なら。すぐにでも、とめにはいり、

「ちょっと、他社さんの商品見させてもらってよろしいでしょうか?」

と声をかけ、タイミングをずらす。あきらかに、声のトーンがかわって、体も半身で営業マンを見ているのに、その営業マンは気づかず、続ける。あちゃ〜、と思ったがどうしようもない。

結局彼は、そのあと、自社の売れ筋の商品を、この店舗でも取り扱いを拡大して欲しいという話をしたのだが、あきらかに、迷惑そうだった。もちろん、そんな中でも、押し切らないといけないときもあるが、今はその時ではないと、私は感じた。

実際、忙しかったのは、この時がピークで、そのあとにきた他社のセールスとは、実に楽しそうに、腰をすえて、話をしていたのだ。搬入用のラックに積まれている本の数を見れば、あとどれだけかかるかくらい予想がつくと思う。それを読んで、5分だけ時間を潰して、戻ってきていたら、また違った結果になったと思う。

そう、今、簡単に、そのあとにきた他社のセールスはと書いたが、なんと私は幸運にも、その日はもうひとりの営業マンの商談の様子も見ることができたのだ。いやいや、これは、とんでもないラッキーだ。本屋にネタを探しに行っただけで、2つの商談を目の当たりにすることができたのだ。

結局、ひとり目の営業マンは、本を5冊購入してもらって、あとからきた営業マンは7冊購入してもらって、商談を終えた。う〜ん、なるほどなあと、そのあと、ずっと彼らの商談について考えていた。

ちなみに、ひとり目の営業マンは、スタッフが7冊買うといったのに、5冊でいいですと言った。彼が何故そういったのか、色々考えがあって、そういったのだろうが、おおかたの予測はつく。じゃあ7冊と、スタッフの口から数字がでるまでの、流れからすると、なるほど5冊に減らした気持ちもわかる。

そのあたりの、心理戦は、非常におもしろいので、また記事を改めて、書くことにする。

ふたり目のセールスとの比較もからめて、次回書いていきたいと思うので、楽しみにしておいていただきたい。

いずれにせよ、今回は圧倒的な差であとからきた営業マンが勝ったのだが、その差は、空気を読む力だった。今回の戦いにおいてはということですよ。今日のスタッフさんに対しては、論理的な話は、あまり必要がないように思われた。どちらかというと、感情で商品を購入するタイプのバイヤー。

そこを完全につかんで、その部分にアプローチをかけた、後者の勝利。あらためておもう。論理的な企画書、完璧なセールストークはもちろん必要だが、その前にやることって、きっと山のようにある。そして、それが、ごくごくあたりまえの、人類として、最低限もっておいておかないといけない、ものだったりするからおもしろい。

別に、そんなにすごい必要なんてきっとないのである。

次回作を乞うご期待。

シェアする

フォローする

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>