敏腕営業マンがもつ、お・も・て・な・し、の心とは

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凄腕営業マンのおもてなしは、レベルが、頭ひとつ抜けている。

滝川クリステルさんが、オリンピック招致のプレゼンで、お・も・て・な・し、というまでもなく、日本の、おもてなしは、世界を圧倒する。高級ホテルの接客や、老舗料亭のおもてなし、一流の小売店のおもてなしは、どこに、出しても恥ずかしくないほどだ。
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それを踏まえて、あえて言うのだが、敏腕セールスのそれは、高級ホテルや、老舗料亭のそれを、はるかに凌駕している。昨日のブログの記事『愛想笑い、媚びた笑顔を振りまくセールスマンの美しさ』に登場する、ふたりの営業マンの、おもてなしぶりは、それだけの事をされたら、それは、クライアントも気持ちいいよな、というものだった。

実は、高級ホテルのおもてなしと、セールスマンのおもてなしは、根本的に違う。この違いについて、書かれているのを見たことがないので、ほとんど意識されることはないのだが、前提がまったく違うのだ。

セールスのおもてなしのほうが、はるかに高いレベルを求められる。なぜなら、おもてなしの相手である、目の前にいるお客さんは、基本的に、そこにいたくているわけではない。

例えば私は、22年間、医薬品をクライアントさんに向けて売ってきた。その中で、本当に飛ぶように売れたのは、おそらく10品もない。それ以外のものは、こちらから、向こうに売り込んだものだ。クライアントさんは最初から欲しいとおもっているものではないのだ。

「おお、あんたまたきたんか。もう買うものなんかひとつもないで、かえり」

と結構な頻度で言われる。そう、クライアントさんにとって、俺は、まったく必要がないじゃまものであり、望まざる客なのだ。誤解を恐れず言うと、忙しいときに、いきなりきた、迷惑なやつなのだ。その、ものすごく、マイナスな状況から、まずは、商談の場に立つまでもっていかないといけない。完全にマイナスの状態から、おもてなしを行ない、商談をしないといけないのだ。

ここが根本的に違う。

高級ホテルにくるお客さんは、そのホテルに望んでやってきている。その時点で、お客さんがなにを望んでいるかの予想がたつ。相手の需要がある程度わかっているところに、おもてなしをおこなえるのだ。もちろん、そこにも、最大限の配慮が必要だし、相当なスキルを必要とされるが、営業マンにもとめられるのは、もっと高度だ。

まず需要がない。鬱陶しい奴がきたと、門前払いをされるなか、無理やり、腕を強引につかまえつつ、そこに、最大限の配慮をもった、おもてなしのスパイスを添える。

このふたつの矛盾した行動を、同時に行なわないといけないのだ。強引に行き過ぎては当然だめだけど、だからといって、いきなり、おもてなしでは、クライアントはどこかに逃げてしまう。

「しゃ、しゃちょう。5分だけでいいので、お時間いただけませんでしょうか」

倉庫の奥のほうに、逃げていく社長の後を、小走りで追っていって、横につけ、腰を30センチほど下げ、右斜め前に回りこみ、社長の足をとめさせようとする。いらんと言ってるのにしつこい私にきれた社長は

「おまえ、しつこいなあ、忙しいねん、今日はもうかえれ」

と少しにらみつけるように威嚇する。その威嚇にたじろぐように、追う足をとめる。まさか、そのまま引くわけにはいかない。ここで引いていては、1円も売上があがらない。営業なんて、基本これの繰り返しだから。

再び3歩後ろを、しばらくは声もかけずついていく。そこで考える。社長は、いつも怒っているけど、今日の怒り方はちょっと、いつもと違う。何かあったのだろうかと。もし、何かあって、相当怒っているなら、今日はもう、商談せずに帰るのも、ひとつだなと。

そう考えながら、しばらく、後をつける。

すると、大量に納品された、商品のダンボール箱が、倉庫の通路を塞ぐように、おもいきり積まれてある。社長はそのまえに、たちはだかり、ためいきを、ついて、そのダンボールを倉庫の奥にひとつ、またひとつと移動しはじめた。

もしかして、これか?そう思った。おそらく、次の荷物が、また運び込まれるのだろう。この荷物を通路に置いていては、次の荷物が入らない。これを移動させないといけないのに、俺がきたのだ。そりゃ、鬱陶しいよな。

その荷物が、怒りの原因だと、仮説をたてた私は、その荷物を移動させるのを手伝うことんした。ここで、おもてなしの心を、働かせる。直接、荷物を運ぶのを手伝うと、それは、直接的すぎて、あざとい。社長もいい気はしない。どうすれば、あからさまにならない感じで、これを手伝うことができるのか。

瞬間的に、判断を巡らせ、周辺に目を配ったら、その荷物とは別の場所にある、違うダンボールたちが、すこし荷崩れを、起こして、通路に雪崩のように、転げているのをみつけた。しめた、と思った私は、その場所に静かに移動し、雪崩の荷物をいったん全部崩し、土台から、丁寧に積み始めた。

カンのいい社長は、その様子に気づいている。そして、直接手伝わずに、すこし離れた違う作業をこなしている、わたしを、あの野郎と思ってみている。直接手伝うなら、そんなことせんでもええと、断りを入れることができるが、少し離れたところを、手伝えば、何も言えない。

それら全部わかった上で、やられたと思っている。

荷物を速く片付けないといけないのは、間違いない。かといって、直接手伝えば、社長の性格上、いい思いはしない。そう判断したわたしの、おもてなしというか、心理戦というかが、今回は勝利した。荷崩れを、早々に直したわたしは、戻ってきて、社長の手伝いをした。

もちろん、そこでは、ふたりの間で、勝ち負けが成立しているのを、社長は知っているので、文句は言わない。

最後のダンボールを積み終えたところで社長が口にした

「なんやねん、きょうは」

そのタイミングで、社長から、その言葉がでるのを予想していた私は、かばんの一番右はしに、入れていたクリアファイルを取り出し、社長に手渡した。

おもてなしとは、すこし違うかも知れないが、お客さんに心地よくなってもらうために、最大限の配慮をするという意味では、高級ホテルのおもてなしと何ら変わることはない。ベテランの営業マンは、つねに、周囲に気を張り巡らせて、クライアントをもてなすことを考えている。

しかも、まったく、こちらに興味がないどころか、マイナスから入っている。それを、まず商談の場をつくる、プラスマイナスゼロにもっていくことから始めるのだ。

ホテルとか、旅館に例えると、クレーム処理が近いだろう。なんらかの理由で、怒っている宿泊客に対して、まずは、お許しをいただき、最後には、ここのホテルはよかった、最高だったと帰っていただく感覚だ。

相当に気を使い、相手の望むところを読み、怒っているポイントは何かを、考えないと、難しいことがわかるだろう。

営業マンのおもてなしが、取り沙汰されることは少ないが、日本が誇る、お・も・て・な・し、のこころは、営業マンの中にも宿っているというのをお伝えしたくて、書いた。

ホテルや小売店のおもてなしが、大したことなくて、営業マンのそれが凄いよと言っているのではないということを、最後につけくわえておく。

日本のお・も・て・な・し、は、どちらにしても、半端ないのである。

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