ただただ、おばあちゃんを助けたいという優しい思いからとった7才児の行動に雷を落とした若頭。

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個人で書いているブログで、ミスド店内で無邪気に泣きじゃくるお嬢さんの話を書いたところ、そこそこバズった。小さなお子様をお持ちのお父さんお母さんには興味深い内容になっているので、まだお読みでないかたにはぜひお読みいただきたい。

『京都のミスドで号泣する4才児「ここでおこらないでよ〜」バアバに懇願理由が素敵すぎる』

バアバとお孫さんである4才のお嬢のやりとりがおもしろくて記事にしたのだが、そのやりとりをみて、自身が幼少期のバアバとのやりとりを思いだしたので書くことにする。

登場するのはこころやさしい7歳児のボンと、これまたやさしいおばあちゃん。小学校2年生の夏休みに父親の実家に帰ったときの出来事。

「おばあちゃん、それ、俺が押したるわ」
「おお、そうか、みさおくんはやさしいな、ありがとう」

そういうと、おばあちゃんは、俺に押していた乳母車を渡した。その乳母車はとても大きかった。座頭市が息子をのせて押していたあの乳母車と同じようなものだった。背の低かったおれにとって、それは巨大な乗り物であったが、腰が曲がったおばあちゃんにとっても同じくらい巨大なものだった。

やさしかった俺は、満足気だった。こんな大きい重たい乳母車を押してあげている。おばあちゃんは、こんなに重たいのを押していたのだ、それをかわりに押してあげている。さぞかしおばあちゃんは楽に歩けているに違いない。そう思って振り返ると、おばあちゃんは遥か後方にいた。

立ち止まって、曲がった腰を伸ばすように立っていた。腰がまがっているのを伸ばしてたつので、後ろに反り返るようだった。その状態に俺に手を振っている。お猿さんのボスみたいだなあと思いながら、わらって手を振っているおばあちゃんをみて、役に立っていると満足気だった。それにしても、なんで遅いのかなあと疑問を残しながら。

まあ、それより、乳母車を押すのが楽しかったし、しかも役に立っていると思っていた私は、ますますスピードをあげた。そうやって調子にのって進んでいると、後ろから聞き慣れた怒鳴り声がした

「みさおー、あんた何やってんの?すぐ戻ってきなさい」

あ、おかんやと思って振り返ったら、ボス猿の横で手を振りながら大声でどなっているおかんが見えた。おかんも猿顔か犬顔かと言われたら、猿よりなので、ふたり並んでいる姿がおかしかった。おお、若頭の登場かと、思ったかどうかは定かでないが、おもしろい絵だなと思っていて、フとわれにかえった。

あかん、なんかしらんけどおかんが怒っている。これはとりあえず、戻ろうと。そう思った俺は、乳母車のとってに体重をかけ前輪を浮かし、後輪を軸にノーズを左に振った。そして、一目散に猿山に向かって走っていった。どんどん加速するのがおもしろく、笑いながら押していたのだが、まもなく、若頭の顔が目に入り、俺の顔から笑顔が消えた。

あかんやつや、なんか鬼の形相や。

急に怖くなり、俺は乳母車を減速させた。それをみた若頭がどなる

「はやく、きなさい」

どっちにしろ、怒られるのは明確だ。その度合を軽くするため、俺は再び加速した。そして、まもなく、ふたりの猿の横に並んだ。よくみると人間だった。

なに?という表情で若頭とボスを交互にみた。ボスは笑っているが、若頭は怒っている。どういうことだと思った瞬間、若頭の左手の手のひらが、パチーンという音を立てて、俺の頭頂部と接触した。

「いた、なんやねん」

そういった俺に、すかさず

「あんたは、何をやってんねや。おばあちゃんの乳母車とって。おばあちゃん、それ押さないと歩かれへんのわからんか」
「まあまあ、そんな怒らんとき、みさおくんは、おばあちゃんが楽やと思ってやってくれてんから。なあ、みさおくん」

俺はわけがわからないまま、おばあちゃんの言葉にうなづいた。おかんは、叩いたその手で俺から乳母車を奪い。後輪を軸に右回りにノーズを先に向け、ボスの前にさしだした。ぼすは、ありがとうと言って、反りきった腰を元にもどして、腕をとってにのせ、安堵の表情を浮かべた。

あ、おばあちゃんに戻ったと思った。おばあちゃんは再び墓に向かって歩きだした。その後を俺とおかんと弟はトボトボと続いた。

「あんな、みさお。おばあちゃんは腰が曲がってるやろ。体が前に倒れるのを我慢するのはしんどいねん。だから、あの乳母車で支えてんねん。ああせなおばあちゃんは歩かれへんねや」

なるほど、確かにそうだ。そうか、あれはおばあちゃんの杖だったんだと、はじめて気づいた。子供の頃はすなおだった俺はあやまった

「ごめんなさい」
「まあ知らんかったからしゃあない。今度から気をつけ」

と言っておかんは、再び左の手のひらを俺の頭頂部に当てた。今度は音がならなかった。

悪いことをしてしまったと思った俺は、かけだして、おばあちゃんの横に並んだ。

「おばあちゃん、ごめんな」

今度はおばあちゃんが、しわくちゃの左手をとってから離して俺の頭頂部に当てた

「あやまらんでええ、あんたはやさしいこや」

うん。と胸を張って前をみた。色づきかけた稲の上には、たくさんの赤とんぼが飛んでいた。
七歳児

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