そのうどん屋の店員さんは70センチ前にいる俺に、100坪の店全域に聞こえるような大きな声で「ありがとうございました〜」と言ってくれた。

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「ありがとうございました〜」

70センチ前方にいる店員さんが私に対して感謝の意を込め言ってくれた。30坪のフロアー全域に届くような大きな大きな声で。

絶対俺にゆーてへんやん。

確かに、その店員さんの声が呼び水となって、そのありがとうは店内にいる社員5名さんに連続的に伝わり、それぞれの人が、それぞれのタイミングで、最初に声を出した店員さんと同じような大きさの声で「ありがとうございました〜」と言ってくれた。

なんとその店にいる全員が私の来店に感謝してくれて、お礼を言ってくれた。となるだろうか。ほとんどの人がならないと思う。最初に声を出した店員さんがもし本当に俺にお礼を言っているなら、70センチ前にいる私にだけ聞こえる声で

「ありがとうね」

と言っているはずだ。そのほうが、よほど心に響く。あきらかに、私にお礼を言っているのがわかるからだ。ところが、最初のそれはそうではない。おそらくマニュアルで決まっているのだろう。大きな声でありがとうを言おう。そして、その声を聞いたスタッフは、復唱しようと。

表面的には全員がわたしにお礼を言ってくれていることになる。お店としては、接客の義務をはたしたことになる。もちろん、帰るときに何も言われないより、はるかに気分はいいが、なにか、全然ありがとうと思われているなという気がしない。

全然こころがこもっていないからだ。それでも、最低限のことをする必要があるというのはわかるが、私ならそうはしない。

まず、お客様がこのお店にきてくれるから、私たちはお金をもらえるのだ。給料は会社からでているが、その会社にお金をくれているのは客なのだというのを徹底する。本質的には客がこないと給料はもらえないということを、これでもかといほどとく。
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だから、お客様は神さまだし、いちどきてくださった方には、またきてもらわなきゃいけない。そうなると、お客様にどう接すればいいかわかるよねと言う。

70センチ前にいる人間に、鼓膜が破れるような大きな声で、お礼をいう必要はないのである「お兄ちゃん、いつもありがとうね、またきてな」と小声で言えばいいのだ。

でも、それだったら、他の従業員がお客様にお礼を言えないじゃんってなるが、そんなことはない。従業員ひとりひとりが気を店全体に張りめくらせていれば、客が帰る動きには気づく。全員が気づくわけではないが、気づいた何人かが、客が店をでる瞬間をみはらかって言えばいいのだ。

そのほうがよほど感じがいい。確実に感謝してもらっているのがわかるからだ。

いっそやまびこが起こるような設計にすればいい。ひとりが大声でありがとうございました〜って言えば、それがやまびことなって、ありがとうございました、ありがとうございました、ありがとうございました、ってなるように。

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