動機は不純でいい。いいひと風情が、やがてホンモノのいいひとになるやも知れぬから

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モノを買うとする。どうせなら、いい人から買いたい。それならばと、いい人を演じて、クライアントにお客さんに接すればいい。

これ以上ないほどの不純な動機だ。

ところが、これがおもしろい。いい人風を演じていれば、それがやがて潜在意識におりてくる、叩きこまれる。それをしなくては気持ち悪くなってくるのだ。習慣とよばれているやつになってくる。

先日こんなことがあった。

京都駅で降り立ったわたし。京都タワーのほうに行くために地下に降りた。雨が降っていたので、地下道を通っていこうと思ったからだ。

駅の北口にあるエスカレーターにのって地下2階に降りた。進路を東にとり、ショッピングモールになっている地下街を歩きだした。まもなくすると、白い杖を右に左に扇状に動かしながら、同じく東に向いて歩いているかたが、わたしの前にあらわれた。

あらわれたはおかしいな、わたしが追いついた。とうぜんだが、歩く速度が遅かったので、わたしは、白い杖にあたらないように、右に大きく膨らんで彼を追い越した。その日もたくさんの人でごった返していた。雨なのもあって、地下街はいつも以上に人であふれていた。

わたし以外の多くの人が、その白い杖をついてい歩く彼を、右側から追い越していた。わたしは、追い越しながら、彼の様子を伺った。この道はいつも通っているんだろうなという感じをうけた。白い杖で器用に方向を確認しながら、強い足取りで進んでいた。

こういうときって、いつも考える。手を差し伸べるべきか否か。彼にとっては、日常。普通に歩いているだけの人に、声をかけて手を差し伸べるということは、それは親切なのかどうか。困っている人がいたら、手を差し伸べるのは河村家の家訓にあったかどうかは知らないが、気が向いたらそうしてきた。

はたして、彼は困っているのだろうか。考えながら追い抜いた。

困っていないという判断をくだした。いつもどおりの感じもしたし、足取りが力強かったので、手を差し伸べるはおこがましいと判断したのだ。わたしは、東に向かって歩き続け、京都タワーに向かった。

と、東に進んでいると、まもなく階段がみえた。10段にみたない小さな階段だが、はたして、彼にはどうなのか。

わたしは、階段を分析した。目の不自由なかたようの黄色いボコボコの床みたいなのはない。階段は通路いっぱいに広がっていて幅が広く、手すりが両端にしかついていない。彼はおそらくまっすぐくるだろうから、階段のまん中にぶちあたる。手すりまで行くのに横に移動しないといけない、これは大変やないかと、判断した。
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とはいうものの、それが日常だったら、その階段は毎回昇っている。昨日今日できたものでないから、大丈夫か。それでもなあ、この階段にはいつも苦労しているかもしれない。うーん、どうしたものかなあと、思いながら、わたしは、振り返った。

すると彼は北側にある、ショップのほうに向いて立ち止まっていた。何やら店員とはなしている。なんや、あの店に行きたかったのか、ここまで、こないんだな、それならよかったと、再び、東に向かおうと、体を時計回りに、東に向けようとした瞬間、彼は店員に頭を下げ、なんと南に向かってあるきはじめた。

そう、たくさんのひとごみの流れを、横切る、通路を横切る形で、歩きだしたのだ。ん?いったいどうしたのだ、あの店で買い物ではなかったのか。

わたしは東に向くために、北側に半身になった上半身を再び西に向けた。そして、足早に、かけだした。西側にもどったのだ。

そっか、道に迷ったのだな。ショップに入ったのは、何かを買いに行ったのではなく、道を聞くためだったのか。なんや、この辺りに全然精通してないやないか。そっか、反対方向にきてしまったんや。

彼に向かって小走りで駆け寄っているあいだに、仮説をたてた。ほぼまちがいないだろう。それにしても、道聞かれた店員、客やなかったらほったらかしかい。ひとごみを、目の不自由な人が、流れに逆らって横切っているのに、危ないと思わないのか。日本はどうなっているんだ、せめて、反対側の人の流れにのせるところくらいまで誘導してやれよ。

十戒のように、彼を中心に人の波が割れていった。彼の足取りは、先ほどと違って、たどたどしい。衝突しては危険だと、わたしはスピードをあげた。まもなく、彼に到達する2メートル手前まで近づいたとき、ついに彼は立ち止まった。どっちを向いているまったくわからなくなったようだった。

立ち止まったのを見て、わたしもスピードを落とし、ゆっくりと近づいた。目の見えないかたは、いきなり声をかけられたら驚くのだろうか、なんて声をかけたら、いいのだろうか、そうやって、案を練りながら、彼の左横に、位置をとった、そして、書けるべき言葉をつむぎだし、発した

「まよったん?」
「は、はい。そうなんです」
「どこ行くん?今、お兄さん、東に向いて歩いてたで」
「はい、アパホテルに行きたいんです」
「ああ、それやったら真逆やな、西に行かな。とりあえず、地上にでましょう」

そういって、わたしは右の肘を、彼の左手にポンと当てた。目の不自由な人をリードするのは、恋人どうしが腕を組むような感じがいいとどっかで聞いたか、習ったかしたので、右肘を出してみた。すると、彼は慣れた様子で、すぐにわたしの肘と右体側部でできた三角形の中に、腕をいれてきて、おねがいしますと言った。

「全然逆向いてたで、しかもここ地下2階」
「ああ、そうでしたか、すみませんね。いつもと違う場所からでてしまって、どっちむいてるか全然わからないようになって」
「なるほど」
「ほんと、すみません、助かります。とりあえず、地上の中央口までいけば、そこからは行けますので、すみません」
「わかりました、じゃあいきましょう」

そう言って、私は彼をリードしながら、西側にあるきはじめた。まもなくするとエスカレーターに差し掛かったので声をかけた。

「エスカレーターは?いける」
「はい、大丈夫です」

わたしはエスカレーターについたことを告げ、のりますよと声をかけたら、タイミングよくのった。

「エスカレーターは楽です。歩かなくていいので」
「なるほど」

そうやってるとまもなく地上についた。雨も小ぶりになっていた。アパホテルは遠いよと行ったら、大丈夫です、いつも行っているので、ここまできたらわかりますと、さらなるリードを彼は、恐縮した面持ちで断った。わかりましたと答えたわたしは、

「じゃあ、黄色のボコボコの床みたいなやつのところまで行こか」
「ああ、はい、助かります」

そうして、わたしは駅前にある黄色のボコボコの上に彼を案内した。白い杖で、それを確認した彼は、もうこれで大丈夫です、ありがとうございましたと、わたしに頭を下げたのだが、ちょっと、方向がずれていた。

わたしは、気をつけてと右手をあげて、答えたが、あ、見えへんわと心の中で、わらいながら、別れた。

なんなんでしょう、わたしは、こんなに人のことを気づかえる人間ではなかったんです。高校から大学は、俺が俺がで、皆俺をみて、おもろいやろ〜で生きてきたんです。まわりが何を求めているかなんて気遣いがまったくできない人間だったのです。

実際に新人セールスマンみさおは、とんでもないセールスマンで、自分のことしか考えておらず、クライアントや上司から、こっぴどくおこられていました。で、それでは商売なんてとてもできないと、先輩や上司から、厳しく教えられ、徐々に、自分でも、それではだめでもと気づき、ベテランセールスマンみさおになるころには、あいつに、読めない空気はないというほど、回りのことを、不純な目的で、みるようになっていました。

だから、この日も、わたしが手を差し伸べなくてもいいだろう、ついこの前も、みさおさんは冷たい人間だからと言われて、おちこんでいたので、そう言われたくないから、やるんだろうと言われるのがいやだから、今日はスルーしようと思っていたんです。

でも、結局、気になって気になって、そういう行動にでてしまったのです。

そのあと、あれは何だったのか、いい人と思われたかったのか、情けをかけたかったのか、偽善的だったのかと、なんども自問自答を繰り返しました。でも、結局、どの感情も、持ちあわせておらず、結局、体が勝手に動いてしまったということしか、考えられないという結論にいたったのです。

いい人が染み付いているとか、俺っていい人やろとか、美談を語るブログコーナーでもありませんので、そういうつもりでこの記事は書いていません。いかんせん、クライアントに商品を買ってもらうにはどうすればいいか、そうだ、いい人っぽくなろうぜという、これ以上ないと思われるほどの不純な動機ではじめてますから。いまさら、いい人に思われようなんてさらさらありません。

もう、癖としか言いようがないですね。習慣になってしまうと、やらないと気持ち悪くなると、よく言われている、あれに一番感覚が近いです。

だから、いい人に思われようとして、いい人風を演じるのも、結果的には決して悪くないということです。今回わたしがとった行動は、いいのか悪いのか知りません。自分の中にもそんな感情はありません。まあ、迷っていた彼は確実に困っていたのですから、いい行為だったのは間違いないでしょう。

体に染み付くってこういうことだとおもいます。もう、これはある意味おそろしいですよね。不順な動機ではじめた、いい人風になるというプロジェクト。これが、もはや、わたしには感覚をともなわなく行なわれているのです。これを、いいことか悪いことかの判断はみなさんにゆだねます。

はたして、あなた、それでも、いい人やりませんか。

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